| 動かす筋肉 意識して |
佐藤 理
|
| 私たちは普段の生活のなかで様々なかたちでからだを動かしています。これを担っているのは筋肉です。筋肉はとりすぎた糖分や脂肪を燃やす器官ですし、おっくうがらず積極的に活動するための動力です。適度な運動を継続し、筋力を維持することは健康を保ち、生活の質を向上させるための必須要件です。 筋力を維持し、増やすとなると、ダンベルなど重いものを持っての激しいトレーニングを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、最近の研究で意外なことがわかってきました。あまり大きな負荷をかけずにゆっくりと動作するという「低負荷トレーニング」とか、「スロートレーニング」という方法で筋力を十分増加させることができるのです。 愛知医科大学運動療育センターの研究から要点を紹介しましょう。研究は60歳代の方を対象に二つの群に分けて行われました。一方は最大筋力の30%、もう片方は50%という比較的軽い負荷で、使う筋肉の収縮を意識しながらゆっくりと筋力トレーニングを実施しました。その結果、30%負荷、50%負荷ともに筋力の増加傾向が認められました。さらに、30%の小さい負荷でも使う筋肉をしっかりと意識して動かすようにすると、50%の負荷と同じ程度の筋力増強効果が期待できることがわかりました。 常識では重い負荷の方が効果が大きいと考えられますから、これは驚くべき結果です。研究ではこの秘密を解くために、目的とする動作のために働く筋肉(主動筋)と、反対側の拮抗筋の活動を調べています。すると、軽い負荷で働かす筋肉を意識してゆっくり動かす場合には、拮抗筋もよく働いていることが確認されたのです。つまり、主動筋のほかに拮抗筋も働くため、もっと重い負荷でトレーニングしたのと同じような効果が得られるのです。 結果を考察してみると、意識してゆっくり動作することで、筋肉の緊張している時間が長くなり、結果、筋肉の血液循環が抑制され、筋肉のなかが低酸素状態になります。こうなると成長ホルモンの分泌も上昇し、筋肉が太くなりやすい環境になると考えられます。低負荷のトレーニングでも、ベルトなどで筋肉を締めつけ行う「加圧トレーニング」といわれるものと同じ効果が得られというわけです。このように低負荷トレーニングは筋肉の量を増やす方法としては大変優れているのですが、低負荷で持続的に力を出すことばかりやっていると、無駄な力が入ってしまい、動きが硬くなるなどの難点もありますのでご留意ください。 健康づくりのため運動に励んでいる中・高年の方も多いと思います。ウオーキングでは一歩一歩の歩幅を伸ばすことを意識しゆっくりと歩を進めるなどして、からだ全体の筋肉の約6割がある下半身の筋力の維持・増強図ってみてはいかがでしょうか。 |
|