「スポーツにおける危機管理」
杉浦 弘一
 先日私が勤務する福島大学は麻疹罹患の可能性のある学生がいることがわかったため、約2週間休校措置をとりました。福島県内の他の大学や高等学校でも同様の措置をとったところもありました。これらの対応はひとことでいうと「危機管理体制」の一貫でとられた措置と考えられます。
 スポーツの世界ではこのような危機管理(能力)が常に求められます。スポーツの現場では怪我や事故が日常生活よりも高い確率で発生します。このときの対応の善し悪しは日頃どのように危機管理しているのか、そのような救急場面を想定して準備が行われているかが鍵となります。
 前述した麻疹への対応は1日くらい熟考してから判断することも可能ですが、スポーツ場面で起こる対応(判断)は数分で判断しなければならないことも多く(時に阿瞬時に)、判断ミス、対応の遅れにより重篤な問題が発生することもしばしばあります。
 スポーツ現場で緊急性が高く危機管理が必要な場面としては「心停止」「頭部障害」「熱中症」などが挙げられます。
 「心停止」としてはショック症状から起こるものやアレルギー性(アナフィラキシーショックなど)のもの、心疾患に起因するもの、胸部打撲に起因するもの(胸部打撲による心室細動など)などが挙げられます。AEDの設置が重要な課題となります。
 「頭部障害」としては、くも膜下出血など頭蓋内の出血、脳障害に起因する意識障害などが挙げられます。
 「熱中症」としては、熱射病発症時に緊急性高い状態となります。特にこれからの季節は熱中症が発症しやすい時期となりますので十分な危機管理体制が要求されます。
 いずれの場合も迅速に対応することが出来れば最悪の事態を回避できることが多いようです。しかしながら危機管理体制が十分に取られておらず、且つ指導者の判断ミスによって応急処置の怠慢、医療機関への搬送の遅れなどにより、大切な命を失ってしまうこともあります。
 指導者の判断ミスの中には、「知識不足」と「大げさにしたくない」という2種類(あるいは両方)のミスがあります。知識不足は指導者としての資質の問題です。救急車を呼ぶなど大げさにしたくないという指導者の気持ちもわからなくはないのですが、大切な命が失われてはなんにもなりません。大げさであっても救急車を呼び、その結果重篤な状態でなければそれで良い、大げさだったことに対して謝罪すれば良いだけのことです。
 特にスポーツや運動の指導者は常に最悪の事態を想定した危機管理体制を整えておくべきでしょう。