「個々に異なる健康観」 杉浦 弘一
 「あなたは健康ですか?」と尋ねられたとき、どのように答えますか?「はい」「いいえ」と即答される方がおられる一方で「どうかな…」「身体は何ともないけれど…」など、少し考えてしまう方もおられることでしょう。

 ここで注目したいのは、何を基準に「健康である」「健康でない」と判断したかです。「具合が悪いところがない」「病気でない」という観点で「健康である」と判断した方もおられると思います。「食事をおいしく食べられるから」という方もいらっしゃることでしょう。「毎日が楽しいから」「仕事が楽しいから」「好きなことができるから」などと身体の調子とは関係のない観点をもたれている方もいらっしゃるかもしれません。
 一般に「病気でない=健康」と考える人が多いようです。特に若い人は、その傾向が強いように思います。私が担当している大学の授業で合計600名近くの学生に、冒頭のように「あなたは健康ですか」と質問し、その理由を尋ねたところ、「病気ではない」という観点で判断していた学生が半数以上いました。「健康のありがたさは失ってみて初めて気づくもの」とも言われるように、身体的に問題の少ない若者の主な観点であるのでしょう。「病気ではない」という基準はわかりやすく、従来の医学においても病気かどうかを判断し、病気である人に対して治療することで健康の維持増進に寄与してきました。
 WHO(世界保健機関)はWHO憲章(1949年)のなかで「健康とは身体的にも精神的にも社会的にも完全に良好な状態をいい、単に病気がないとか病弱でないということではない」と健康を定義しました。「病気でない」だけでなく、「精神面や社会面における良好な状態」も必要であると説いたのです。これは現代人が抱えている「ストレス」の問題に触れた提言であると考えられます。
 近年では「自分自身の能力が十分発揮できる状態」「やりたいことが出来ている状態」を「健康である」と考える人も出てきています。多少病気や怪我を抱えていても人生の目標や生き甲斐を見つけ、それに向かって精進し、QOL(Quality of Life:生活の質)の高い生活を送ること出来ることが「健康である」という考え方です。特に中高年や高齢者にとってはこの考え方は理解されやすいのではないでしょうか。

 正しい答えがある問題ではありません。「太く短く生きる」「細く長く生きる」など人生観が人それぞれであるように、「健康観」についても個々に異なります。一度自分自身の健康観について考えてみてはいかがでしょうか。