「ゲームのスポーツ化」
小川 宏
 最近のテレビゲームには、指先でコントローラーを操作するのではなく、実際にテレビ画面の前でスイングすることによって画面の相手とテニスやゴルフの試合をするものがあります。そのリアルなスポーツ感覚が人気を集め、かなり売れているようです。このような体感・体験的なゲームは街のゲームセンターにも見られ、ステップを踏むダンスのゲームや、ペダルを漕ぐバイクのダウンヒルゲームなど沢山の種目が揃っていて、多くの人に楽しまれています。

 それほど体を動かしたいのであれば、いっそ本物のスポーツをすればいいのではないかとも思えるのですが、これらの体感・体験的ゲームは「その場で」「すぐに」「一番面白いところを」楽しめるところが魅力と言えるでしょう。つまり実際にスポーツをしようと思ったら、運動する場所探しから仲間集め、用具の準備などが必要になるのですが、ゲームにはその必要がありません。また、実際のスポーツを楽しむためにはある程度の技能が必要ですが、ゲームでは実際のスポーツ経験が全くなくても楽しめるように設計されているからです。

 一方、運動部活動に代表される従来のスポーツ団体や集団はどうしても「上手な人が中心」で、活動も「ひたすら上達を目指す」という指向性を持っているので、「新しくスポーツを始めてみよう」「ちょっと運動してみたい」という人達にとって敷居が高く感じられているのではないでしょうか。その証拠に、大学では最近、体育会系と呼ばれる運動部に所属している学生よりも、同好会と呼ばれるスポーツサークルに多くの学生が集まる傾向にあります。

 スポーツに近づいていくゲーム業界とレクリェーションへ移行していくスポーツ。この2つの歩み寄りが意味するものは何でしょうか?それは世の中の多くの人々が、もっと気軽にスポーツを楽しみたいと思っているということではないでしょうか。人間は動物である以上、運動を否定して生きていくことは出来ません。運動が得意であれ苦手であれ、体を動かしたいという欲求は誰にでもあるはずですから、そうした欲求をいつでも、どこでも受け入れられるような、敷居の低いスポーツの環境や意識を確立していくことがこれからますます重要になっていくことでしょう。