| 小学生の100m練習は? |
川本 和久 |
| 「100mを走るとき、息は止めて走るのですか?」100m日本記録保持者の二瓶秀子選手の場合だと、レース中に10回呼吸をしていました。では、発育発達の途中にある小学生についてはどうでしょう。 100m疾走中のデータを取ってみました。この小学生女子は100mを14秒3で走っています。この記録だと、県大会で上位に入賞するくらいです。疾走中の呼吸数は13回でした。スタート直後に1呼吸するのですが、本格的な呼吸は、数秒後から始まり、大人と同様に1秒に1呼吸程度でした。1回の酸素摂取量は、30〜50mlと二瓶選手より多めです。疾走中の心拍数は、スタート直後は、1分間あたり140拍くらいですが、本格的な呼吸が始まると230拍まで上がり、これがフィニッシュまで続きます。こんなに心拍数が上がるのかと、本当に驚きです。「速い」といわれる子ども達は、ほとんどが同様の傾向を示しました。 無酸素パワーの依存度(酸素借)をみると小学生のトップクラスの子どもたちは、二瓶選手と同じように70%程度でした。小学生は、無酸素パワーはあまり発達していないという過去の研究結果があっただけにこれは驚きです。近年、発育発達のスパート期が早まっているので、以前の研究が当てはまらなくなってきているようです。 このことから小学生トップの子どもたちは、大人と同じようなスプリントトレーニングを行ったほうがいいと示唆されます。ただし、トレーニング量は、小学生の体力に応じたものでなくてはいけません。 一方、走るのが遅い小学生の100m疾走中の酸素摂取動態は、非常に興味深いものを示していました。疾走中の呼吸数は、20回程度と多くなります。1回の酸素の摂取量も40〜70mlとなり、総酸素摂取量は、先ほどの小学生たちの2倍です。無酸素パワーの依存度も50%程度と低くなります。つまり100m走のためのエネルギーは、疾走中の呼吸にずいぶん頼っていることになります。 心拍数は、スタートから4秒くらいまで120拍程度です。その後180拍くらいで、フィニッシュまで推移します。どちらかというと、長距離走みたいな感じです。 この子どもたちは、身長がまだ伸びきっていません。つまり、発育発達のスパート期を迎えていないと言えます。そのため、無酸素パワーを発揮する力が備わっていないと考えた方が良さそうです。ですから、このような児童は、大人のスプリンターが行うような短距離的なトレーニング手段を用いても100mは速くならないことが伺えます。ダッシュなどを繰り返すより、バランス能力や調整力、素速く動いたりする能力を向上させることが先決です。発育発達をよく観察して、トレーニング手段を選ぶことが重要となるでしょう。 |
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