「メタボリックシンドロームを意識して」 佐藤 理
 最近メタボリックシンドロームという言葉を良く耳にするようになりました。2001年度から2010年度を目途に、寝たきりなどにならないで健康に生活できる期間、健康寿命を伸ばすことを目標に「健康日本21」運動が展開されています。早くも中間地点にさしかかりました。後半の取り組みの重点はメタボリックシンドロームということになりそうです。背景は40歳以上の1/3、約2000万人がメタボリックシンドローム予備軍と見積もられ、医療費が増大する懸念があることです(医療制度改革試案、厚生労働省、2005年10月)。試案では2025年までに3/4に減らしたら8000億円が削減され、2035年に半分に減らせば、医療費2兆6000億円の削減になるとしています。
 研究の世界では肥満、高脂血症、高血圧、高血糖の一つひとつは軽症であっても、複数重なると動脈硬化につながり、ひいては心臓病、脳卒中、糖尿病といった生活習慣病をひきおこすことが明らかにされてきました。WHO(世界保健機関)は「死の四重奏」「シンドロームX」とかバラバラだった呼び方や定義を整理し、「メタボリックシンドローム」という名称に統一し診断基準を提唱しました(1998年)。
 メタボリックシンドロームの研究では日本が世界をリードしてきています。1990年代後半に、勤労者約12万人を対象に大規模な調査を実施しました。その結果、肥満、高脂血症、高血圧、高血糖などの危険因子を三つ以上併せ持つ人は持たない人に比べて、心疾患の発症リスクが36倍も高いということを明らかにしました。これらの研究が下地になり日本のメタボリックシンドローム診断基準が作られました。内臓脂肪の蓄積(ウェスト周り、男性85cm以上、女性90cm以上)を基準として、高中性脂肪と低HDLコレステロールの二つのうちどちらかと、高血圧、高血糖の三項目のうち2つ以上を併せ持つものがメタボリックシンドロームであるというものです。
 私が担当したコラムで取り上げてきた歩くという運動は有酸素運動の代表的なものです。心臓や肺など呼吸・循環器系のはたらきの維持・増進はもちろん、「有酸素運動」という言葉から運動中に取り入れる酸素によって、体内の余分な脂(あぶら)や糖分を燃やすことができ、肥満、高脂血症、高血圧、高血糖などの改善にもつながるということが容易に理解できると思います。
 メタボリックシンドロームを意識するとこれにプラスしたい運動があります。次回に取り上げるレジスタンストレーニングというものです。