「ルール変更の背景」
小川 宏
みなさんは日頃、どのようにスポーツを観ていますか。また、観る側のみなさんがスポーツのルール変更に関係しているなんて考えたことはありますか。ちょっと想像がつかないかもしれませんが、これは事実です。
例えば現在の6人制バレーボールでは、従来のサイドアウト制(サーブ権がある場合のみ得点となる)から、ラリーポイント制(全てのラリーがどちらかの得点になる)にルール変更されました。このルール変更の主な理由としては、一つは観ている側の得点方式の分かりやすさを重視したこと、そしてもう一つは主に放送する側からの試合時間短縮の要求に応えたことが挙げられます。どちらも観戦者や視聴者である私たちの存在がルール変更に影響したと言えるでしょう。
同様に競技時間の短縮を図ったルール変更としては、陸上競技でのスタートで誰かが一度フライングしてしまうと、二度目のスタートでは誰がフライングしても失格になってしまうルールが挙げられます。選手の側からすると少々不公平なルールにも思えますが、これも主に観る側、放送する側の都合によって、スムーズに競技を進めるルールに変更した例と言えるでしょう。
またサッカーのゲームにおいては、味方キーパーへのバックパスをキーパーが手で扱うことが反則になりました。これも、時間稼ぎよりも積極的に攻めるゲームを観たいという観る側の要求がルール変更に影響したと考えられます。
このように多くのスポーツが観る側の要求によってルール変更されているという事実は、裏を返せば私たちスポーツ観戦者の見方や考え方が現在のスポーツを作り上げているということでもあります。
普段、私たちはプロスポーツを観戦しているとき、ただスポーツを外側から観ているだけで、スポーツに影響を与えているという意識は全くありませんが、このように考えると、実は観戦者一人一人の思いが集結することによって、少なからずスポーツに影響を与えていることが分かります。日常生活の例で言えば、ファミリーレストランで私たちが頼んだ注文の一つ一つは本部で集計されていて、次期メニュー作成に一定程度の影響を与えているのと同じです。
したがって私たちは、スポーツ文化の発展に貢献する一員として、会場でスポーツ観戦をする時はもちろん、テレビでスポーツをみるときも、素晴らしいプレーは賞賛し、つまらないプレーには厳しい目を向けて、観る側からスポーツをよりよい方向に育てていく意識を持ちたいものです。
もちろんプレーする側にとっても、従来のサイドアウト制で接戦になると3時間を超えることもあり、身体上の負担が大きすぎる等の理由もあったのですが、実際は上記の2つの理由、つまり観る側、見せる側の都合がルール変更に大きな影響を与えたと言われています。