「運動と貧血」
杉浦 弘一
 貧血とは血液中のヘモグロビンが減少する病気です。血中ヘモグロビン濃度が男性では14g/dP、女性では12g/dP未満になると、貧血と診断されます。
 ヘモグロビンとは赤血球中に含まれる物質で、肺で酸素と結合し、全身に酸素を運搬する働きを担っています。ヘモグロビンが減少すると、十分な酸素を全身に運搬することが出来なくなり、立ちくらみや目まいなどの症状を引き起こします。
 運動時には多くの酸素が必要となります。特に持久的な運動時には非常に多くの酸素を必要とします。貧血になると十分な酸素が供給されなくなり、本来の力を発揮できない、いくら練習しても成果が現れない、疲れやすい、疲れがとれにくいなど、スポーツを楽しむ人にとって大きな障害となります。
 貧血の多くは鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血とは主成分である鉄分が不足したためヘモグロビンが減少した貧血のことです。鉄分が不足する原因は様々あります。食事からの鉄分摂取量減少が大きな理由です。女性の場合、月経による出血も鉄欠乏性貧血の原因となります。また、運動時の多量発汗による鉄分の損失(汗に鉄分が含まれています)や運動時の着地衝撃により溶血(ヘモグロビンを包む赤血球が破壊されること)し排泄されることも鉄欠乏の原因として挙げられます。これらスポーツ選手に起こりやすい貧血を「スポーツ貧血」と呼ぶこともあります。
 鉄欠乏性貧血は徐々に引き起こされます。第1段階として血液中の鉄分が減少します。この時点ではまだヘモグロビンは減少していません。この状態を「潜在性鉄欠乏」といいます。第2段階になると体内の鉄分が限界まで減少し、材料が無くなったためヘモグロビンが減少します。
 貧血になってしまうと体内の鉄分を増やし、その後ヘモグロビンが生成されるのを待つため、回復には多くの時間が必要となります。従って貧血の予防のためには定期的に血液検査を実施し、貧血予備軍ともいえる潜在性鉄欠乏を見つけることが大切です。潜在性鉄欠乏の段階で食事による鉄分摂取や鉄剤投与などの適切な処置をすれば貧血に陥ることを防ぐことができます。
 鉄欠乏性貧血を予防するためには鉄分を食事により摂取するのが最良の方法です。鉄分にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、特にヘム鉄は吸収されやすく良いと言われています。ヘム鉄を多く含む食品にはレバー(豚、鶏、牛)、アサリなどがあります。ヘモグロビンの構成要素であるタンパク質なども意識して摂取する必要があります。