「日本のスポーツ文化を育てるのは誰?」 黒須 充
  トリノ五輪で金メダルを獲得した荒川選手が、テレビのインタビューの中で「現在の自分の基盤を作ってくれたスケートリンクが閉鎖に追い込まれている」という問題を取り上げ、スケート競技を取り巻く環境の窮状を訴えていました。第2、第3の荒川選手を目指す子供達が練習場所を奪われ、夢をあきらめなければならないという現実を我々は深刻に受け止めなければなりません。
一人の金メダル選手を輩出するまでには、最低でも20年単位の長いスパンでの練習環境の整備と質の高い指導スタッフのバックアップ体制が必要不可欠です。しかし、わが国ではどんなに素晴らしい素質や高い意欲を持っていても、必ずしも誰もがその種目を長く続けられるわけではないようです。
今回、荒川選手が訴えたことで、はじめてマスコミがその現状を取材し、その窮状にスポットライトが当てられたわけですが、スケートに限らず、現在のわが国のスポーツ環境は、今回のトリノ五輪で最多となる29個のメダルを獲得したドイツなど諸外国に比べると、立ち遅れていると言わざるを得ません。その大きな違いは、どこにあるのでしょうか。
ドイツでは、地域のスポーツクラブを基盤に小さい頃からいろいろなスポーツに触れる機会を持たせ、少しでも多くの人材の中から優秀な選手を発掘し、長期的な視野に立って育てるという一貫した指導システムが整っています。いわゆる、裾野を広げようとする「生涯スポーツ」と頂点を極めようとする「競技スポーツ」がまさに車の両輪のようにうまくかみ合い、相乗効果を発揮しているのです。もちろん、こうした環境づくりのために、国や地方自治体もある程度公的資金を投入していますが、実際、その財源の多くはサッカーくじに寄るところが大きいのです。
サッカーくじとは、プロサッカーの試合結果を予想し、当たった場合は賞金を手に入れることができますが、はずれた場合でも、そのお金は身近なスポーツ環境の整備や国を代表する選手達の強化費として使われ、無駄にはなりません。つまり、国民がサッカーくじを購入することが国全体のスポーツ環境を整え、スポーツ文化の形成に一役買っていると言い換えてもいいでしょう。
 わが国でも、2001年よりスポーツ振興くじ、通称「toto」がスタートしましたが、売り上げは下降線をたどり、存亡の危機に瀕しています。totoの良さ及びその大いなる可能性を今一度再認識し、スポーツを文化として育てる主役は他でもない国民一人ひとりであるという意識を根づかせることが、わが国のスポーツ再生への第一歩となるのではないでしょうか。