筋肉痛になってますか? 安田 俊広
  「年をとると筋肉痛が遅く出てくる」そんな話を聞いたことはありますか?おそらくこの話は日本全国で語られていることのようです.果たしてこれは本当でしょうか?答えはNOです.
筋肉痛の出現時期と年齢との関係を調べた研究がいくつかありますが,その多くは,年齢と痛みの出方には関係がなく20代でも60代でも,運動24時間後から48時間後に痛みのピークが出現することを報告しています.
筋肉数が生じるときの痛みの出方,つまり,痛み出す時間,痛みの程度,痛みのピークの出現時期には大きな個人差があり(年齢とは関係なく),同じ運動刺激を与えたにも関わらず,激しい筋肉痛になる人とまったく痛みを感じない人がいます.年をとると筋肉痛が遅く出てくると「感じる」理由は,この個人差に起因するのかもしれません.
 筋肉痛は一度経験するとしばらくは同じ運動刺激に対して筋肉痛になりにくいという性質があります.したがって普段運動をしない人が,久しぶりに運動をしたりすると筋肉痛は激しくなりますが,日常的に運動をしている人は,同一の運動強度では筋肉痛が起きません.学生時代に比べ仕事をするようになると身体を動かす機会はどうしても少なくなってしまいます.そんなときに1年に1回の子どもの運動会などあったりすると翌日に激しい筋肉痛になってしまいます.症状がひどければそれだけ痛みも長く続くので,年をとったから痛みがいつまでも続くといった印象を持つのではないでしょうか?つまり筋肉痛の症状が激しくいつまでも続くのは「年齢のせいではなく,日ごろの運動不足が原因」ということです.
 筋肉痛は不快なものですし,スポーツ選手にとってはパフォーマンスを低下させる原因にもなるので,できれば速やかに痛みを軽減したいと考えます.しかしいったん筋肉痛になってしまうと多くの場合手遅れです.入念なクーリングダウン,マッサージ,ストレッチング,入浴どれを行っても筋肉痛の軽減にはほとんど効果がありません.筋肉痛を予防するには先に述べたように事前に一度筋肉痛になっておくという方法が唯一確実な方法です.
 しかし,筋肉痛になったからといって通常は気にすることはありません.肉離れのような運動中に生じる怪我と異なり,運動2-3日後に出てくる筋肉痛は,どんなに激しくても4週間あれば完全に元の状態に戻ります.むしろ以前より筋肉は強くなりますので,定期的に筋肉痛を経験して筋に刺激を与えることは,筋力が衰えがちな中高年者には必要なことかもしれません.