| 運動と風邪 |
杉浦 弘一 |
| インフルエンザが今シーズンも猛威を奮っている中で、トリノでは日本選手が活躍していることと思います。オリンピックでこれまでの努力に報いるためには、風邪をひいている場合ではありません。 1988年ソウルオリンピック日本選手団の選手村医務室では、かなり多くの選手が上気道感染症(のどや鼻の風邪)を含む内科的問題で受診しました。『運動すれば風邪をひかなくなる』とよく言います。十分に運動しているはずのオリンピック選手の多くに、なぜ風邪の症状が現れたのでしょう。 我々は常にストレスに曝されています。「良い緊張感」という言葉があるように適度なストレスは我々にとって好影響を及ぼします。一方ストレスが原因で様々な病気になるように、過剰なストレスは身体に悪影響を及ぼします。運動は身体的ストレスと考えられます。従って適度な運動は好影響をもたらし、過度な運動は悪影響を及ぼします。 免疫機能とは自己と非自己を認識し、非自己を排除する働きのことをいいます。風邪に対する免疫機能は日常の運動強度によって変化します。適度な運動を継続していると、運動していない人に比べて風邪をひきにくくなります。しかし、激しい運動をしている人は、適度な運動をしている人ばかりでなく、運動をしていない人と比べても風邪をひきやすくなります。 1回ごとの運動においても同様のことが言われています。適度な運動を行ったときは免疫機能が一時的に高まり、その後運動前の状態まで戻ります。運動時の呼吸量増加によって多くのウィルス等が体内に入るので、対処するために免疫機能が高まると考えられています。しかし、激しいトレーニングをしたときは免疫機能が一時的に高まりますが、その後運動前よりも低下し、しばらくすると運動前の状態に戻ります。これは激しい運動の後には筋肉が損傷しており、これらの自己細胞に対して免疫機能が過剰に働き、筋繊維を非自己と認識することによる自己免疫を抑制していると考えられています。 従って、適度な運動は短期的にも長期的にも免疫機能を高めるますが、過度なトレーニングは免疫機能が低下している可能性が高くなっています。だからといって競技スポーツのような運動が悪いわけではありません。他の人よりも免疫機能が低下していることを認識し、日頃から風邪の予防に努めることです。うがいや手洗いの励行はもちろん、普段からマスクをしてウィルスなどの体内への侵入を防ぎましょう。運動中の水分補給の時も一度口を漱いでから飲み物を飲みましょう。 |
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