| 「ノーサイドの精神」 |
小川 宏 |
| ラグビーには基本的に延長戦がありません。たとえ同点で終わっても、さらに試合時間を延長して決着をつけるということをしないのです。ではラグビーのトーナメント戦において同点で終わったらどうなるのでしょうか?その時はまずトライ数が多い方を勝ち上がりとし、もしトライ数も同じであれば抽選で次に進出するチームを決めることになっています。これはサッカーや野球など他の多くのスポーツが同点の場合延長戦やPK戦を行い、あくまでも実力で勝ち負けをはっきりさせようとする考えとは大きく異なっています。ではどうしてラグビーでは延長戦やPK戦をしないのでしょうか。 その答えは、ラグビーが持っている価値観「ノーサイドの精神」にあります。ノーサイドの精神とは簡単に言えば、試合終了の笛(「ノーサイドの笛」と言います)とともに敵サイドと味方サイドの区別を無くし、そこから先は全力で競い合った仲間として友情を育む、という考え方です。したがってたとえ同点で試合が終わっても、全力を出し尽してサイドが無くなったわけですから延長戦がないのです。また、そもそもラグビーはテストマッチ、あるいは対抗戦といった、ライバルチーム同士による単独の試合で行われていたため、同点で試合が終わっても特に不都合は生じませんでした。 ともあれ、このノーサイドの精神は、スポーツ界全体が勝利至上主義の傾向を強めている今日、結果としての勝ち負けよりも大切なスポーツの価値について、とても重要な示唆を与えてくれるような気がします。ラグビーの試合中は両チーム計30人がぶつかり合いながら、一つのボールを激しく奪い合い敵陣に攻め込んでいきます。しかし試合が終わればネクタイを締めブレザーを着て、さっきまで激しく争った相手と友好を深める。とても清々しいスポーツの在り方だと思いませんか? 他のスポーツでも、試合終了後に相手選手とユニフォームを交換するなど、友好的な場面を見ることができる一方で、負けた選手が試合後の挨拶や握手をきちんとしない場面も時々見られます。誰でもスポーツをする以上勝ちたいと思うのは当然ですが、試合とは互いの力の試し合いであり、相手がいて初めて試すことが出来るのです。対戦相手は自分を高めてくれる存在であることを忘れずに全力を出し尽くし、勝っても負けても試合後は相手に感謝し健闘を讃え合うというノーサイドの精神を、全てのスポーツ選手に持ってもらいたいものだと思います。 |
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