中高年の筋力トレーニング 安田 俊広

 日本人の「平均寿命」は20年連続して世界のトップクラスにあります(男性:78.3年、女性:85.2年.平成14年).また健康な状態でいられる「健康寿命」も世界一です.この2つの寿命の差つまり「不健康期間」は,男性で約6.5年,女性は約9年と言われています.
 この不健康期間は,ケガや病気などで日常生活に何らかの支障をきたしている期間というわけです.今回は,この不健康期間を短くするために,自立した生活を送るために筋力トレーニングの果たす役割について考えてみましょう.
 筋力トレーニングとは,筋肉に大きな負荷をかけ筋量と筋力を増加させる運動です.筋力が増加することによって,重いものを持ち上げることが出来るようになったり,ケガの予防などが期待できます.しかし,トレーニング効果を得るためにはある程度重い負荷を筋肉にかける必要があるので,血圧の上昇や関節へ負担がかかるといったリスクをともないます.
「そのようなリスクを払いながら中高年者を筋肉隆々にしてもしょうがないのでは?」といった議論があります.確かに競技者でない我々にとって,日常生活で大きな筋力を必要とする場面はあまりありません.
 しかし,前述したように,日本人の寿命は極めて長くなりました.加齢に伴い体力・筋力はどうしても徐々に低下していきます.その結果,高齢者,特に後期高齢者では自分で自分の体重を支えることが困難なほど筋力が低下することがあります.特に脚の筋力の低下は,歩行能力(速度)を低下させ生活の質を低下させます.したがって,自立した生活を送る体力的基盤を維持するために,高齢者こそ意識的に筋力トレーニングを取り入れる必要があるのかもしれません.また,より若い頃にトレーニングをして筋力をつけておけば,たとえ加齢により体力が低下してもその低下の程度を小さくすることが出来ると言われています.
 人間の身体は,使わなければ衰え,適切に使えば向上し,使いすぎれば疲弊する.という法則があります.この法則は老若男女すべての人に当てはまり,高齢者であっても適切に使えば体力は向上しますし,動くことをやめると衰える一方となります.
 国内にはバリアフリーの建物が増えて来ていますが,階段を登る体力があるのに,エレベーターを使うなど「身体をいたわる行為」は,同時に「不使用による筋の萎縮」を引き起こす行為でもあります.同様に,高齢者の荷物を持ってあげるといった行為は,実はその人の体力向上の機会を奪っているのかもしれません.

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