スポーツ フォア ライフ 黒須 充

 いま世界では、誰もが自分の生活の中でスポーツを楽しめる「スポーツ・フォア・ライフ」の動きが高まっています。こうした潮流は、いわば「人生の重要なパートナーとしてのスポーツ」に各国が力を入れ始めていると言い換えてもいいでしょう。
例えばカナダでは、運動をしない人の割合を人口の10%にまで引き下げるという国家目標を設定しました。これが達成されれば約50億ドル(およそ4900億円)の医療費削減が見込まれるとの試算がでており、実際にどの州においても着実に成果があがっていることが確認されました。ちなみに我が国の運動非実施者の割合は31.4%です。
またドイツでは、国全体でスポーツクラブの育成に取り組んでいます。その数は8万7千以上、会員数は2,700万人にもおよび、実に国民の3人にひとりが地域のスポーツクラブに入っている計算になります。その結果、ドイツでは、どんな「まち」にも必ずスポーツクラブがあり、地域コミュニティの拠点として重要な役割を担っています。
さらに、犯罪の低年齢化が大きな社会問題となっているアメリカでは、スケートボードやMTB(マウンテンバイク)など若者向けのスポーツ施設やイベントに予算を投入したことにより、青少年の犯罪率が低減したという報告もなされています。
このように、スポーツの振興は、ただ単にスポーツを普及・発展させると言うことだけではなく、医療費の削減や地域づくり、そして青少年の犯罪防止など、様々な社会問題の解決に寄与する極めて重要な役割を担っているといえるでしょう。
 一方、わが国のスポーツは、これまで学校や企業を土台に発展してきたため、日常生活の中でスポーツを楽しむという感覚に乏しく、いったん拠り所を失えば、スポーツから遠ざかってしまうことも珍しくはありません。スポーツが生活や人生を豊かにする文化として根づいていない証拠とも言えるでしょう。
 そうした中、すべての世代の人が、身近な場所でスポーツを楽しむことができる「総合型地域スポーツクラブ」の設立が待望されるようになりました。1995年、文部省のモデル事業として6クラブでスタートした総合型地域スポーツクラブは、その後、1998年の特定非営利活動促進法(NPO法)や2000年のスポーツ振興基本計画の後押しを受け、現在では2,155のクラブが全国各地で活動しています。
いずれにせよ、お仕着せではなく、自らのライフスタイルに応じて主体的にスポーツを選択できる「スポーツ・フォア・ライフ」の実現が、明るく豊かで活力ある日本をつくるための最重要課題であるといっても過言ではありません。

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