子どもの肥満と運動 安田 俊広

 近年,小児の肥満が問題になって来ています.最近の調査によると小中学生の10人に1人以上が肥満傾向にあり,この人数は増加しています.肥満傾向児が増加する原因は,生活習慣(運動不足,高エネルギー食の摂取)と社会環境の変化(遊び場の減少など)にあると言われています.現代の子供たちの運動量が低下していることは,文部科学省の体力・運動能力調査の結果からも間違いはないでしょう.つまり,青少年(6〜19歳)の体格は向上しているにもかかわらず,体力は年々低下していく傾向にあります.
 小児の肥満が問題視される理由は,肥満が成人と同様に高脂血症,高血圧,耐糖能異常などの動脈硬化危険因子を増加させるということがありますが,特に小児においては肥満が成人肥満に移行する可能性があることも重要でしょう.小学生の肥満が成人肥満に移行するかどうかは,はっきり分かっていません.しかし小学生の時に肥満が高度であった場合,そのまま移行する可能性はかなり高くなるようです.
 では,肥満を予防・解消するためにはどうしたら良いのでしょうか?基本は適切な食事と運動を心がけることです.成人の場合,減量のために食事量を減らすという選択肢もありますが,成長期の過程にある子どもには賢明な方法ではないでしょう.むしろ高カロリーの食事をそうでない物に変えるといった,内容に工夫を加えるのがよいと考えられます.
 次に,運動をするならどのようなことをすれば良いのでしょうか?子どもの運動能力を調べると子どもは4歳ぐらいですでに成人と同レベルの有酸素能力(持久力)を持っています.反対に,短距離走などで重要な無酸素能力は,この時期まだ未熟な状態にあります.したがって思春期前の子どもは運動のほとんどを有酸素的に行っています.逆に言うと子どもは疲れを引き起こすような無酸素的な運動は,やろうと思ってもなかなか出来ないのです.子どもが疲れることなくいつまでも動き回っている様子をよく目にしますが,そのような子どもの体力特性のなせる業と言えるでしょう.成人の場合,減量を目的として運動をするときは有酸素運動が推奨されますが,子どもの場合はとにかく動き回れば,すべて有酸素運動になります.したがって指導するとすればとにかく動け!ということになります.
 多くの場合,子どもは自分で食事の内容や周りの環境を変えることは出来ません.子どもが現在,そして将来において肥満になるかどうかは大人が決めるといっても過言ではないでしょう.

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